真夏なので怪談でも

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 この週末に巡った物件の中に1つ、妙な物件があった。
 その物件、周りが駐車場で見晴らしはいいものの建物の鬼門に位置していた。不動産屋の若い兄ちゃんは「まだ前に住んでた方の荷物が残ってるんですよ~」なんてニコニコしながら案内してくれたが、今思い返せば、その笑顔は精一杯の作り笑顔で引きつっていたかのように思う。
 角部屋でキッチンも洋間も広く、バスとトイレが別の好物件なのだが・・・

 部屋に入ると驚かずにいられなかった。荷物が残ってるなんてものじゃない。つい、数週間前までそこに人が住み、そして忽然と住人がいなくなった。そんな状態の部屋だった。洗濯機の中には汚れた衣類が放り込まれ、床には万年床が敷かれたまま。洗ってない食器がシンクに積まれ、クローゼットには男物のスーツやパンツが何着もかかっていた。床に転がっていたコンビニの袋には蟻が行列を作り、中の食べ残しを漁っていた。
 この部屋に住んでいた住人は、転勤による転居により、部屋を出たらしい。そしてこの部屋に残っているものは数日のうちに全て廃棄されるそうだ。
 ここまでのことでわかるように、「ワケ有り物件」であった。「転勤による転居」なんてアヤシイものだ。家賃も今までの額より二千円引き下げて借り手を捜すそうだ。
 あの部屋に住んでいた方が転居された本当の理由はわからないし、知りたくもない。ただ、あの物件を見てから、僕の体がどんより重たく何かとだるく感じる。月曜日の憂鬱だけじゃない、黒い影が肩の上にのしかかってくる感じ。
 あれま、連れてきちゃったのかな。盛塩でもしましょうか。

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