「原爆もの」というカテゴリーで縛ってしまうにはあまりに忍びない、さまざまな要素が含まれた映画だった。
妻を家族を50年にわたり記録してきた集大成的作品。放射能の影響による甲状腺ガンを患った妻,寝たきりの母,画面に登場するたびに成長しているお孫さんたち。何でもないように見える日常に覆いかぶさる「原爆」の影。それらが丁寧に切り取られていて、かつてない穏やかなドラマを生んでいる。やや演出してる感も(特にお孫さんたちに)みうけられるのだけど、川本監督という定点で捕らえた「ドキュメンタリー」であることは間違いない。また、映像に挟み込まれる手記の朗読が映画に厚みを持たせてる。
舞台が僕の実家から程近いところで、川辺とか、神社とか、最寄り駅とか、お孫さんがかぶってた小学校帽とか、あまりに見慣れているものがスクリーンに次々とあらわれて、心の中で「あぁっ!」っと声にならない感嘆をあげる。絵になる風景じゃないか。
この作品は監督の過去作からの引用も多く見受けられるのだけど、単品で観たいものが多く、特に「私のなかのヒロシマ」は観ておきたいとおもった。7月11日に映像文化ライブラリーで川本監督の特集上映があるので観に行こうかと思う。無料だそうだ。
川本監督は「広島エイト倶楽部」という今年創立50周年(!)を迎えるアマチュアビデオクラブの会長さんらしい。初日に見た上映後のトークでは反戦,家族愛,そしてそれらを超える映像愛を語ってらして、ユーモアもある方だった。奥様とともに末永くお元気いて欲しい。
映画「妻の貌」 オフィシャルサイト
http://www.tumanokao.com/
『妻の貌』劇場予告編