・「花はどこへいった」
 二十数年前にベトナムにバラ撒かれた枯葉剤「エージェント・オレンジ」が、未だに人体に影響を及ぼし、苦しめ続けていることを知る。静かで淡々とした映画なのに胸をえぐられる様なショックを受けた。そして障害を持って生まれた子でも愛し、育て、介護している親の姿に本来人の持つべき姿をみる。

・「デコトラギャル奈美」
 元はエロVシネなのだけど、人情のたっぷり詰まった作品だった。吉沢明歩さんのきれいな四肢をスクリーンで拝めたのもよかった。何よりいいのは表情というか目つきだな。あの目に睨まれたい。そして啖呵をきられたい。

・「ゆーのーみー」
 なんでこんな男をを取り合うかなぁと、ダメなヒモをやらせたら日本一になってしまいそうな吉岡睦雄さんのダメさはリアル。それだけにラストの結末が気持ちいい。

・「ヒモのひろし」
 またヒモの話。いいタイミングで挿入されるジャンベとコオロギの鳴音が緩急つけてくれる。カットと構図が意表を付き捲るがことごとく"映画的"でニクイ。平沢里奈子がどうしようもない役なのに全くイタくないのはあの凛とした顔つきだからかな。

・「草叢」
 速水今日子さんの演技にドキドキしっぱなしだった。ふわふわ生きているようで、実はそれは日常のフラストレーションからの回避の為で、腹の底ではグツグツと煮えくり返ってて、だからこそ啖呵をきるシーンがあんなに迫力がある。

・「アナーキー」
 ヲルガン座企画の深夜上映会、今回は80年代パンクシーンのトークショー付きというこで、スクリーン前にコタツ(!)を設けてのほっこりトークショー。アナーキーが時代に迎え入れられた背景をうかがい知ることができた。
 映画は当時の映像とアナーキーのメンバーや影響を受けたミュージシャンのインタビューで構成され、クラッシュのドキュメンタリーに似た肌触りをもった作品。怒髪天の増子の意気込みが尋常でなく、アナーキーコスプレをしてのインタビューだった。アホや。一方、当のメンバーは飄々と当時を語ってて、やや拍子抜けしつつもそれも貫禄かとおもう。
 アナーキーの音楽をがなりをあらためて聞き、その歌詞の正直さに熱くなる。青白い顔した中学生に聞かせてやりたい、オザキよりアナーキーを。

 さかのぼること1週間ほど前。3月31日(だったっけな)に横川シネマにて、映画「デメキング」を観た。

 怪獣映画において、いちばんドキドキワクワクするのは怪獣が出てくるまでの不穏な平和にあるんだなぁと気付かせてくれた。この映画のピークは「足跡拓」を広げるシーンであって、その後のデメキング登場シーンなんてオマケというか蛇足みたいなもんだ。
 1970年という年代設定を生かしても描いてもなかったのが残念。蜂屋が東京で闘おうとすらせずに腐ってるだけなのが残念。蜂屋の父役のガッツ石松は何を喋ってもガッツ石松だ、最高。

 まぁとにかくデメキングが現れる平成30年までせいぜい闘おうじゃないか。

デメキング OFFICIAL SITE
http://www.demeking-movie.com/

 さかのぼること2週間前。3月22日に横川シネマにて「へばの」と「岡山の娘」の先行上映があった。

 「へばの」は「ラザロ」の制作チーム出身・木村文洋監督の長編第1作目となる作品。
 青森のとある核廃棄物処理施設で起きた事故により、軌道を逸れてしまったカップルの愛憎。
 ひとことで言えば、「重い」作品だ。この作品はいろんな事柄を丁寧なほどに背負い込んでいる。そして、この物語はかつて「起こった」話であり、この先「起こる」話でもある。
 かつて広島に原爆が落ちて灼熱・爆風・放射能の被害を受けた。僕の祖父母の世代に当たる人々はそれでも次の世代に希望をみだし、子孫を残し、だから僕はここにいる。
 そして青森の六ヶ所村に核処理施設(実際的に処理でなく加工施設だが)ができ、稼動に向けて着々と不具合を重ね重ね進んでいる。事故は必ず起こるだろう。そしてこの物語が描いたような悲劇が淡々と起こるだろう。
 原発は汚くて危険なエネルギーです(だから作業員は防護服を着てる)。

 ちなみに舞台挨拶にきた木村監督は、一睡もしてないらしくヘロヘロで、終了後は最終の新幹線へと駆け去っていかれた。パンフにサインもらいそこなった。

「へばの」公式HP
http://teamjudas.lomo.jp/


 「岡山の娘」は、詩人にして大学教授でもある福間健二監督(岡山出身)による、オール岡山ロケ・岡山キャストによる、それでいて「岡山らしさ」が抑えられた青春映画。
 「岡山らしさ」が抑えられているというのは、表通りじゃなく、裏通り的な場面で多く撮っているからで、錆びた建物が迫りくる場面が廃墟好きにビシビシとくる。観光地巡りをしないぶん、日常感がでて、自分の生活側に映画が擦り寄ってくる感じもする。
 地元の方をキャストに擁立してるのでセリフ回しにやや難はあるのだけど、方言の使い方はうまくって、隣の県ってことで違和なく耳にはいってきた。そして劇中に朗読され、ときに台詞として用いられる「詩」の威力に圧倒される。圧倒されるだけに後半疲れてしまった感はあるけれど。
 「トーチカ」がピックアップされ、そこのオーナーで帽子作家の入海さんが出てて(予習せず観たので)びっくりした。去年ヲルガン座であった展示でひとことふたこと話した程度だけど、いい感じに錆びたダメ父がピッタリ嵌ってた。
 終了後は福間監督夫妻とともにヲルガン座へ(マキちゃんの卒業イベントだった)。トーチカの話。今の映画界の話。いろんなお話を聞かせていただく。人柄が良く、壮年の紳士といった感じの方だった。

岡山の娘 公式ブログ
http://d-mc.ne.jp/blog/musume/

 「へばの」は4月12日から、「岡山の娘」は4月18日から、それぞれ横川シネマにて公開。

 三連休の中日、「1」の日につき横川シネマに映画を観に行く。熊切和嘉監督作「ノン子36歳(家事手伝い)」。

 一見、「何気ない」ようだけど、それぞれの登場人物のキャラクターがしっかりしてて、だからこそ長回ししても厭味でも大げさでもなく、「何気なく」みえる。日常感がでてる映画だった。

 「このねえちゃん、中学生かっ!」と、突っ込みたくなる、坂井真紀演じるノン子のまったくだめだめなドン詰まり感に、ときにイラっとしたりもする。が、SAKEROCKリーダー星野源演じるマサルがもっとダメな男で、毒で毒を制するかのようにダメが当たり前の映画になりそうだった。星野リーダー、SAKEROCKのステージ上ではピリリとしてるけど、この役柄のダメ男ぶり、ガキンチョぶりには笑いがこみ上げてくる。夢もってるらしいけど、そのベクトルが妙な方向むいてんだもんなぁ。うらやましいような、ぜんぜんそうじゃないような。中盤に現れた鶴見辰吾演じる元夫がさらにダメで、この3人だけのダメダメ映画にしちゃえばいいのに、と思う。他のひとらは普通にしっかりしてるから物語としてなりたつのだけど。

「ノン子36歳(家事手伝い)」公式サイト
http://nonko36.jp/

『ノン子36歳(家事手伝い)』予告

 「ザ・フー:アメイジング・ジャーニー」を見てきた。洋楽ぜんぜん詳しくなくて、モッズでもないので、The Whoについては「ジェネレイションの人ら」程度の知識しか知らないんだけど、この映画でThe Whoをおおいに知ることができた。
 当時の映像とメンバー・関係者のインタビューとで構成されたドキュメンタリー映画なのでThe Whoのイントロデュースにもなるし、激レアな映像つかってるらしいのでコアなファンにも嬉しいんじゃないかな。ピート・タウンゼントのウインドミル奏法をこれでもかというぐらい堪能させてもらった。が、楽器を壊すミュージシャンは嫌いだ。
 映画を通してThe Whoの楽曲を端々まで聴く。時代を巻き込み、時代に巻き込まれながら楽曲が変化してゆく。そのなかでもジョン・エントウィッスルのリードベースは楽曲のリズムとメロディーを完全に掌握してて、一本筋の通ったシュアな演奏をし続けてる。寡黙だが、オシャレで浪費家で「漢」として最も憧れる最期を遂げた彼に非常にシンパシーを感じた。
 エンディングで流れる、あらゆる時代の「マイ・ジェネレイション」をコラージュしたのが圧巻。何十年も演奏し続けることの重みをどーんと感じる一曲だった。

「ザ・フー:アメイジング・ジャーニー」公式サイト
http://thewho-movie.com/

Amazing Journey: The Story of The Who (trailer)

 そうそう、横川シネマのロビーにかっこいいベンチソファーが搬入されました。座りにいってみて。
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