・田口ダンディ「モザイク」

 ナントカ三部作、やっと三作目。前半の身体性の強い文体は心地よかったけど、後半、恩師の精神科医に会ってからのグズグズした文体はササっと読み進めてまった。主人公がサッパリな人物で拍子抜け。もっとハラワタをドロドロにしてほしかった。波動とか直感とかあまりにも都合が良すぎる要因で進む物語に少しうんざりした。

・浅野いにお「世界の終わりと夜明け前」

 ここ3年くらいの間に描かれた短編をまとめたもの。全体的にトーンがくらいけど、僕はこの作者のダークなのが好きなのでとても楽しめた。願わくば、いにお氏にはもっと凹んでいただいて暗~いのをどんどん描いてもらいたい。

・やまだないと「西荻夫婦」

 以前ネコで読んだことあって、また読みたいなと思ってたのに棚に出てこなくって、一年ぐらいまってたけど出てこないので買ってしまった。この物語に出てくる夫婦が今の自分と同じ年で、ひとりで暮らしてる自分と、ふたりで暮らす主人公らとの生活を比べていろいろ考えてしまった。

・古川日出男「gift」

 12月13日に向井秀徳との2マンライブを横川シネマでするということで予習として購入したのだけど、すごくおもしろかった。そしてこの本のおもしろさをうまく説明する自信がまったくない。突然始まり突然終わる物語、語り口も物語の長さもバラバラ。でも一編一編どれもおもしろい。とにかくライブが楽しみ。

・村上龍「ハバナ・モード―すべての男は消耗品である。〈Vol.8〉」

 小泉が首相をし、自衛隊をイラクに派遣しようとし、拉致被害者家族が帰国した頃の時事ものエッセイ。これ読むと日常に緊張が生まれる。世の中ってのは「どうしてそうなるのかわからない」ことばかりがまかり通ってるんだねぇ。筋は通していこう。

・サンテグジュペリ「星の王子さま」池澤夏樹訳

 綺麗で大切なことが書いてあるいい本です。読みかけなので全部読んでから改めて感想を書きます。

・嶽本野ばら「おろち」

 映画のパンフレットのオマケとしては最適なノベライズ。いままで少女や作者の投身の視点で語られていた物語が、今回は西条というステレオタイプの執事の視点によってなされてる。ステレオタイプの執事に感情移入できるわけがなく、淡々とページをめくり読み終えた。こちらでは一週間しか公開されなかった映画は見てない。

・近藤聡乃「いつものはなし」

 10代の頃に誰もがする、道を踏み外したような空想がそのまま描かれた作品。この人の、最近のすっきりしたタッチの絵で好きになったんだけど、昔のオドロオドロしたのもいいじゃないかと思えてきた。

・町田康,荒木経惟「俺、南進して。」

 ご存知アラーキーの写真に町田康の怒涛の文章が加わり、押し流されるように読んだ。主人公の綴る劇中話と過去と現在とがゴタゴタになって、わけわからなっても、それでも物語りは止まることを許さず、段落もなく、読点(、)だけで区切られた文章は、はじめ、ぎょっとしてしまったけど、中盤あたりからやみつきになってしまった。

・角田光代「トリップ」

 どこにでもあるような郊外の街での群像劇。皆さまざまな過去をひきずりながらその町で暮らし、どこかしらに居心地の悪さを感じ、それでもそこに住んでいる。

・星野智幸「目覚めよと人魚は歌う」

 思わせぶりなタイトルの本を多く出していて気になってた作家さん。薄い本なのに読むのにかなり時間がかかった。読みにくいのだ。3人称と1人称が混在してるし、登場人物の人物像が掘り下げられまま、ずんずん話すすんじゃうし、かなり置いてけぼりを食らってしまった。こんな気持ちを角田光代さんの解説がうまくフォローしてくれて本一冊読み終えた時点での不快感はさほどでもなかった。

・三浦しをん「むかしのはなし」

 独白の形式を以って語られる現代の伝承、といった趣の本。昔話との関連性を探りながら読むとサッパリおもしろくないんだけど、一個の独立した話だと割り切るとかなりおもしろい。切り口が多様なのでアンソロジー集を読んでるみたいだ。って昔話のアンソロジー本なのだから、そうか当たり前か。

・穂村弘「本当はちがうんだ日記」

 素敵になりたくてなりたくてしょうがない穂村さんの、素敵になれなくてガッカリなんだよう。な、エッセイ。穂村さんは素敵なひとだ。彼のつくる短歌はふさわしい褒め言葉が見つからないくらいにすごいし、彼の短歌評はグゥの音もでない程に的確だ。そんなすごい人みずから語る彼の弱点はお腹がよじれるくらいにおかしい。このひと絶対理想が高すぎるんだよ。キムタクはハードル高すぎ!

・奥田英朗「東京物語」

たぶん自分は、二十九歳にもなって、将来は何になろうなどと考えているのだ。

 

 たまたま開いたページ(それは解説のページだった)にこの一文を見つけて読もうと思った。18の春に上京し、29でフリーのコピーライターとなる主人公の各時代の1日を切り取った作品。ジョン・レノンが暗殺された日,名古屋オリンピックがおじゃんになった日,ベルリンの壁が崩壊した日。それぞれの時代を生きる人間の思いを感じ取ることができた。

 夢を見るには遅すぎて、何かをあきらめるには早すぎる歳なのかもしれんね、二十九歳って。そして僕はもうすぐ三十になるんだ。

 

・いしいしんじ「ぶらんこ乗り」

 このお話にでてくる弟くんは、まるで幼少の頃の自分みたいだった。新しい遊びを思いつき、突拍子もない物語を創造してた。あのころの自分はどこに行ってしまったんだろうね。異国に旅立ったまま消息を絶ったかのように、かつての自分はそこにはいない。

 にしても、このお話、まるで奇跡のように素晴らしかった。読んでいて、こんなにも興奮(ドキドキとワクワク)したのは久しぶりだ。

 

・嶽本野ばら「幻想小品集」

 発売してまもなく買ったのだけど、半年ほど寝かせていた本。

 あの事件以来、僕はほんのちょっとだけ野ばらさんのことが嫌いになってたみたいだ。けど、この本読んだら感服してしまった。綺麗で惑いがない文章。完璧ではなく潔癖という言葉で賞賛する方がしっくりくる。

 野ばらさん、最近はバンド組んで少年ナイフと東名阪ツアーしたらしい...。いったいどこへ向かっているんでしょうね、この人は。またしばらく目をはなさないでおこう。

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